こんにちは。新潟県にあるコシヒカリ漁業組合の人見(ひとみ)です(写真のおじさんではありません)。
今漁師をやっています。3年目です。
今回、私のような他府県から移住して漁師をしてくれる人を求めて、求人案内を出すことになりました。
パソコンができないとかで自動的に一番若手の私が人事担当になった次第です。
私が漁師になったきっかけ。
単純に言うと東京で仕事に打ち破れたからです。
主に顧客と上司の間の板挟み。さらに出世争いの焦り。自分が自分でない時間を新卒から10年。頑張ったと言うか耐えていた。そして限界が来ました。
あれですね。人間って訳分からなくなると海に行くもんですね。本当に私、海に向かっていました。
名ばかりの退職金と貯蓄を支えに、私は新潟県に向かいました。
以前に新潟に旅行に行った際、とても居心地がよかったのを思い出したからです。心が求めていたままの行き先。
釣りはしたことなかったのですが海なら釣りだろうと釣具屋を探し、初心者でも使えるセットでいざ海へ。
釣りの経験がないだけにモタモタ。
その姿が向かっさ先の漁港では目立ったのかもしれません。もしくは私の逃避行の暗さのせいだったのかもしれません。
ちょっと強面のおじさんが話しかけてきました。
「ここじゃ釣れねえぞ?」
(!?)
人との軋轢に逃げてきた私は話し方を一瞬忘れていたようです。
あっけにとられて沈黙。
するとおじさんは、
「兄ちゃん。仕事は?今日は休みか?」
たぶん普通に聞いただけなんでしょうけど、見透かされたみたいになってここに来た顛末を話しました。初対面。しかもこんな状況でこんなことを話すものじゃないんでしょうが。
「ならよう。漁師がいいぞ」
「漁師ですか? いや……仕事から逃げてきたような自分ですよ?」
「だっておめえ。そりゃあ人が嫌っていうか、合わなかったんだろ。俺だって東京で机の前で何かしろったって無理だぜ」
「え、はぁ……まあそうなんですかね」
「漁師は客も同僚も魚だ。兄ちゃん。よけりゃあこっち来い」
おじさんは漁師さん。私に漁師で生計を立てることを勧めてくれました。
全く考えてもなかった漁師。普通なら速攻断るところですが、戻る先が東京くらいしか思い当たらず、できる仕事はもう全て同じ環境と結果になりそうで頭が回りませんでした。
「できるんですかね? 僕に」
「知らねえよ笑 でもよう。ダメならそのときだ」
漁師のおじさんは、それまでのちょっと強面な雰囲気から想像がつかない、東京で見たことがない笑顔で私の背中を押してくれました。
とはいえ釣りさえまともにやったことがない男が、東京の机の上から大海原に職場を変えることができるのか?
不安というか無謀な感じがして即断には至らず。まあ当然ですよね。
その後、東京に戻っては新潟に戻ったりを繰り返していく内に、貯蓄が減るのと同じく私につきまとっていた色々な面倒くさい気持ちも減っていくことに気づきました。
最初に出会った漁師のおじさんは中丸さん。漁師歴40年以上のベテラン。
中丸さんの船に載せてもらって見学させてもらったり、漁の手伝いをしていく内に、漁師ができそうというか一度やっておいたほうがいいのかも、という気持ちになったのです。
最初に漁港で漁師のおじさんに釣られた私は、3か月後に漁師見習いになりました。
漁師になるかどうか?で気になるのは生活が成り立つかどうかもそうですが、漁師という存在がちょっとおっかないイメージがあることでした。
TVで見る漁師はちょっと怖い、物の言い方がキツい印象です。
実際どうか?
というと地域性もあるでしょうが、言葉だけで中身はそう怒っていないのが事実です。ああいう言い方しかできないって言えばいいのでしょうか。
私の周りのベテラン漁師は口は悪くありませんが漁のときは物の言い方がちょっとキツくなります。
しかし、海は危険です。優しくまったりと言っている時間はありません。すると誰でもあんな感じのぶっきらぼうな言い方になると思うんです。私もその内似てくるんじゃないかな……
だから仕組みが分かれば漁師仲間ってそんな怖いものじゃないです。
都会で詰められるような、あの心臓から脳裏までを一緒に掴み絞られるようなストレスはありません。
漁師は基本的に夜や夜明けから午前中に漁に出て、水揚げしたら漁具の整備などで仕事は終わりです。
遠洋漁業だと船の中で生活ですが当港は小さな漁船での一般漁業です。
私の場合だと朝の夜明け前から9時には漁を終え寄港しています。その後は出荷作業、漁港組合の事務仕事(東京での事務仕事とは比べものにならないホワイトぶり)があり、だいたい昼には自由になります。
その後、漁具の整備があるときはそれを。後は趣味のオンラインゲームをやったり夜は自炊して晩酌タイム。
東京の時みたいにずっと心がひりついてないし時間の制限もほとんどないから、東京時代と比べると雲泥の差です。
ただ稼ぎに関してはいろいろです。
北海道だとホタテ漁師がめちゃくちゃ儲けているって話がたまに出ますが、結局は需要と供給です。ホタテは中国需要がすごいので高く売れるし、また養殖なので取れ高も安定していてます。
一方、私が主に獲っているのは天然の魚です。つまり安定しません。また捕る魚によって売上もかなり違います。
でも周りの漁師さんはみなさんご家庭があってお子さんを立派に育て上げておられます。むしろ跡継ぎ不足で漁師が減っているのでパイの奪い合いという状況にはなっていません。
大儲け……はたぶん無理でしょうが、東京で人間らしい生活をできなかった自分からしたらこんなにいい環境はありませんね。
ある意味人が嫌で逃げてきた私にとって人間関係は大きな要素です。
漁師界隈って上下関係が厳しそうなイメージがありました。ここに来るまでは。
これは先程も述べましたが口が悪いというかキツい人が多いイメージがあるからですが、実際は違っていて中身は怒ってない、そうならざるを得ないことを知るとなんてことありません。
漁師は基本的に一匹狼です。親子で、弟子と、というペアや、船の規模によっては5人以上とか乗り込んで漁をしますが、東京で働くときのような上司と部下みたいな関係性はありません。
もちろん対等、タメという緩い関係ではありません。これもなんていうんでしょうか?男が男に惚れるって昔から言いますよね?あれに似ているのかも。尊敬というと何か違うし……でもなんか悪くない。この関係といった感じ。
変に呼び出されて用事を押し付けられるってことはないです。でも誰かが困っていたら自然に助ける関係性があります。
私なんて完全に外様。新参者でみなさんのルールも何も分からなかったんですが、漁の仕掛けや船のこととか他の漁師さんに聞くと教えてくれます。また聞いていいのか分からず漁港組合の事務員さんに世間話をしたら、夕方に会ったこともない漁師のおじさんが「おめえ、あれ分からねえんだろ?」と助けに来てくれたこともあります。
田舎で漁師町というと閉鎖的な印象ですが、漁師というハッキリしたシンボルがあるとみなさん安心するのかあれこれ世話を焼いてもらってありがたい思いをしています。
私も自然とお手伝いをするように。
東京時代はできるだけ自分の仕事を減らすことに全意識を向けていたことを考えると天と地の差です。
それがあって、漁港組合の事務仕事でPC関係を整備したり、今こんな風に漁師の求人募集をしたりしています。
これらは特に報酬をもらっているわけじゃありません。でも身近な人の役に立っているというやりがいを人生で初めて、いや子供の時以来でしょうか?それを感じています。
また野菜とか肉とか米とかなんか結構もらえているのも、普段のこういう仕事を見てもらっているんだなあって感じられるのもいいですね。
お問い合わせ頂いた質問の回答内容を簡単に掲載しています。
新たなご質問がありましたら追記していきたいと思います。
体力があったほうが良いのは事実です。しかし漁師は結構高齢の人もやっています。漁の種類にもよりますが、体力というより体の使い方がうまいかどうかだと思います。ちなみに私は学生の間ずっと文化系クラブでした。
漁師は独立もあります。私はまだそのつもりはありませんが、最近だと代替わりみたいに従業員漁師が後を継いだケースもあります。
私が30歳で漁師に転職。その時に先輩漁師は年下の人もいました。都会の年齢上下と違って年下の先輩というのは思っている以上に気になりませんでした。後は上が多いです。だいたい50代くらいまで中心です。
漁師は基本的に自営業です。でも漁師仲間という適度な距離感の仲間もいます。
最初は物覚えが悪くて指導係の漁師さんに怒られたりとかはありましたが、これもそれも危険が少なからずある漁師という仕事のためです。甘くではいけません。
一人で漁をするようになったら、上から怒鳴られるってことはありません。あるのは天候。天候だけは恐怖です。怖い上司?はお天道様だけです。
私みたいに都会でダメだった人。まだまだいろいろな選択肢があります。
漁師が向いていない人もいます。向いているかどうかも分かりませんけどね。
だから一度、こちらの海でも見に来ませんか?
美味しい魚あります。いいお店もご紹介できます。
漁師という仕事を近くで見てみたい。それっきりでもいいです。
漁師はダメだな、となったなら、それはそれで人生の選択肢が一つ絞られたわけです。私達は貢献できたのです。それで構いません。
一度ご連絡ください。
下記問い合わせフォームにてお願い致します。
漁師はここだけじゃなく他でも募集していると思います。当漁港以外への就職、転職となる機会になっても歓迎です。
ぜひお問い合わせ、ご質問お待ちしております。
働き方は多様性を見せていますが同時に向き不向きのミスマッチも起こりやすくなっており離職率も問題となっています。
特に離職原因となりやすいのが人間関係のストレス。
働く、というとどこかの会社に就職することをイメージして、実際にその通りに行動する人がほとんど。ですがそれがその人に合ったベストな選択である可能性は思っている以上に低いものです。
ホワイトカラーっぽい人が実はブルカラーが天職だった、ということは大いに有り得ることです。
そこで今回は漁師に着目して、漁協や漁港などが人手不足、後継者不足を解消しようと漁師の求人広告を出す想定で作成してみました。
都会の人間関係で疲れてしまった人が、魚と海を相手に伸び伸びとその人本来の良さが引き出されるきっかけになれば……
このWEBサイトの運用想定
求人、しかも職業と地域性が絞られているのでSEO対策はやりやすいと思います。できればSNSでの露出も努力して誘導したいところですが、さすがに漁師の求人は他の求人と違い反応性は鈍いです。
あまり求人に力と期待を入れすぎず、悪く言えば放置する感じで運用すると気楽だし結果もあまり変わらないと思います。
他のコンテンツ(ページ)として用意したいのは、漁師になったら自分はどんな生活を毎日送るのだろうか?という見えない部分が分かるようなものが必要。代表例としては既に活躍されている猟師さんの1週間なんかを飾らずにそのまま載せる感じがおすすめです。