大阪市中央区。と聞くと大阪の人はビジネス街を想像するが、やってきたのは玉造。
ビジネス街とはちょっと言えない感じのまったりした雰囲気がある町並み。
JRと地下鉄の玉造駅から徒歩10分ほど歩く。
リアルな中央区と違い時間の流れがスローにやや感じる道筋。
見えてきたのは10階建てのビル。ここに入るのが株式会社日本浦塗料株式会社。ここの企業さんが社員を募集しているとのことで話を聞きに行った。
入口で出迎えてくれたのは人事担当……ではなく社長さん。
「従業員30人くらいなんですよ。人事担当がなんか忙しいって!」
てっきりベテラン社員さんかと思ってあいさつしたらトップでした。そしてなんか明るいというか、この玉造っぽさがある雰囲気の年配男性といった感じ。
ビルの1階は駐車場。8~10階が会社のフロア。その他のフロアは直接会社と関係はないけど縁があるそうで、2階の指圧マッサージ店に社長はたまに行くらしい。
受付は8階。
「基本的にここで商談が行われていますね。コロナ禍で海外企業とはリモート商談だったんですが、今は海外から直接ここに来られる海外企業さんもいますね」
社長に会社の仕事内容を教えてもらった。
「ざっくり言うと塗料の商社なんですが、ただ横から横に塗料を流しているだけじゃないんです」
社長によると、塗料と言っても塗る対象物や塗布後に使用する環境、また塗膜で出したい機能など顧客によって要望は様々。
ただ単に色を出すだけなら私達の仕事は必要ないでしょうね、とのこと。
「商社というか塗料の御用聞き。塗料のアドバイザーみたいなのが当社じゃないかと」
顧客が製品開発や販売をする上において必要となる塗装工程。ここで使用する塗料の提案が主な仕事となる。
社長によると塗料と言っても様々な種類があり、また組み合わせや塗る対象物、環境で思っても見ない塗膜になることもあるらしく、事前にテストするなど顧客企業のコストと手間をカットする役割も担っていると。
となるとここの社員として働くには塗料の勉強が相当必要なのでは?
「いや。もちろん知識はある程度学んでもらう必要はありますが、業界30年以上の私でもパッと何もかも答えられませんよ」
社長は無理無理!という仕草で笑いながら答えた。
「今回募集している職種は営業ではあるんですが、一般的なイメージの営業とかなり違うと思います」
営業というと外回り。これもある意味御用聞きみたいな側面があるが日本浦塗料株式会社の営業は少し違うらしい。
「塗料の提案や組み合わせ、実験や改良提案とかそういったことは会社全体でやります」
何か販売したり取り次いだりという営業の場合、売るものが基本ある程度の範囲で決まっていることが多い。だがこの会社では営業がそこまで判断できるレベルではなく、まず顧客の意図を吸い取る、集めることが営業に求められることのようだ。
「彼から話を聞いてみてください」
8階のフロア奥から社長に呼び出されたのは営業担当の都両さん。
「彼、前職はパン職人でウチに来て3年なんだけど、1年ちょっとで大手の顧客担当」
変わった経歴だが元々こういった仕事に向いていた優秀な人なんだろう。そう思った。
ーーなぜパン職人からこの会社へ?
「腰を痛めちゃって生地をこねる作業が辛くなりまして、その他の製造作業とかに配置換えしてもらったんですがやはりパン作りしているって感じが薄くなっちゃって……それでたまたま弊社の求人募集を見て、塗料って結構奥深いのだなと。パン作りも単純なようで粉とか水とか気温とかいろいろ加味してやらないと思った通りに仕上がらないんです。自分の提案で大きな工業製品の良し悪しが決まる、と聞かされて、パン職人になろうとしたときの気持ちが蘇ってきて応募しました。」
勝手なことを言うと非常に真面目そうでおとなしい雰囲気の男性。世間一般で言う営業マンの要素が一欠片もないようにも思えた。
「彼ね。まあ寡黙なほうなんですけど顧客の要望の裏を取ってくるのがうまいんですよ」
どれだけ事業に精通している顧客社員でも、自分が必要としている仕様や要求を100%正確に相手に伝えることは実は難しい。頭で分かっていても言葉や文章にすると齟齬や伝え漏れが起きることがある。
主に契約事は書面で最終的に確認されるが、実際はそこに至るやり取りで生まれた相互理解がいい契約、いい結果になることが多い。
確かに仕様書、顧客企業の要望を100%叶えたサービス、製品提供ができたとしても、実はまだ上の余地があったケースは数え切れないだろう。当人達が気づいていないだけで。
塗料というとどうしても塗る、という単純なイメージを持ちがちだが、顧客企業の要望をそのままストレートに受け入れて納品、提案していては常に普通の結果となってしまう。
社長はこう教えてくれた。
「彼が持って返ってくる顧客企業の要望はですね。技術者からしたらそんなのいる?というのもあったり。でもいざ突き詰めていくと、やっぱりこれで良かったね、となることが結構多いんですよ。何気ない会話とか現場の様子とかから相手さんの隠れた要望の端っこを掴んで返ってくるって感じですかね」
どうだろうか?
営業職というと売ってなんぼ、売り込んでなんぼというイメージがあるが、この会社の営業職はむしろ一歩引いた立場で活躍している営業職だ。
営業職という言葉で拒否反応を起こしてしまうような、ちょっと陽気な世界は苦手なタイプほどむしろ輝ける仕事かもしれない。
都両さんに聞いてみた。
--顧客企業に訪問したり担当者から話を聞くときって、かなり緊張したり戸惑うことは多いですか?
「最初は慣れないので緊張はしていました。塗料の知識も全然足りないのにって。でもとにかく相手企業様が求めている結果を、できるだけ正確に社に持って帰ろうと考えていました。今思えば、塗料の知識も乏しいから何とか他の代替情報で補おうとしていたんだと思います。それが逆に専門用語に頼らずに済み、社長が言ってくださる顧客要望の正確性に繋がっているのかなと」
--都両さんは世間一般の営業職と同じだと思いますか?
「たぶん違うと思います。私は何か需要を生み出してお金を払ってもらうような能力も性格もないです。大学の同期にも営業職は一杯いますが、たまに会ってもやっている仕事が違いすぎてお前営業じゃないだろって言われますね 笑」
一般的に営業というと体育会系の独断場な雰囲気がするが、少なくともこの会社の営業職はそういったパワーより、世間的には「陰」とされるものが活きる印象を受けた。
ちょっと繊細な人は周りから受け取る情報量が普通の人より多い。それを自分で咀嚼できず殻に閉じこもってしまう人も多くいるが、この情報収集機能は活かし方次第で化ける。
特に今回の企業の営業職はそうだろう。
大人数でワイワイは苦手だけど1対1だと話せる。そんなタイプがこんな営業職に向いているかもしれない。
営業職。という言葉で尻込みしていた人は、どんな仕事に就くにしてもこういった世界もあるということを覚えておいて損はないだろう。
的確に相手の情報を取り込み、相手が出せていない裏に気づいてあげる。
そして製品の塗装面という一番表の部分を裏から支える。
世界を裏から塗る仕事。
職種:営業職
給与:23万円~(大卒) 20万円~(高卒)
応募条件:・高卒以上・社会人経験(パート・アルバイトを含む就労経験)のある方
勤務時間:9:00~18:00
昇給賞与:昇給/年1回(4月)賞与/年2回(6月、12月)
休日・休暇:週休2日/月8日以上
手当:通勤手当・資格手当・出張手当
福利厚生:各種社会保険完備(厚生年金保険、健康保険、雇用保険、労災保険)
勤務地:大阪市本社(顧客企業訪問で日本全国出張あり・出張手当あり)
1.下記応募フォームにて必要事項記入の上送信
2.書類審査合格の方は面接のご案内を差し上げます
3.本社にて面接
4.採用
社長の裏(うら)です。
営業職というと成績次第のイメージですが、当社の営業職はいかに相手顧客の話を聞き、相手企業が思い描いている理想の完成形を本社に共有できるか?これに尽きると思います。私自身もこの会社の営業出身です。正直モノを売るのは苦手です。ですが今こうして社長業までやらせて頂いているのは、この会社の仕事が合っていたんだと思います。塗料は馴染みがない業種なようで、私達の生活の直ぐ側にいつもあるものです。ぜひ当社の事業を発展させてくれる方とご一緒したいと思います。
人手不足は常に聞くワードですが、これは同時に雇用主と社員とにミスマッチが起きているからでもあります。
入社してみたけどなんか違う。優秀と思っていたのになんか違う。
これは企業側の採用活動の難しさが理由。人を判断して雇うというのは、かなり長い目で見ない限り最初は違和感を感じるものです。しかし時代は即戦力が好まれます。
あまたある求人募集ですがどれも無機質に感じていました。
これは応募する側の想像力に任せるしかありません。どんな職場で自分がどんな働き方を時間を過ごすのか?は応募する側の人がどう想像するかで決まります。
だから大企業というのは誰でも一定のイメージがあり、かつ企業側が積極的は発信をしなくても応募する側で様々な情報が集められます。結果、ミスマッチは多少防がれます。
しかし中小企業や個人零細企業の場合は違います。
何やっているか?どんな人がいるかさっぱり分かりません。
でも分かる求人情報はありきたりのものが多い。さらにネットで調べても情報がない。
となると応募者の想像力ではイメージを賄えず、とりあえず応募してみて……ということになり、いざ入社した際にギャップですぐ辞めてしまう可能性が高くなります。
でも「アットホームな職場です!」みたいな案内文はもはや365日食べ続けたメニューのように食指が動きません。
いい職場と思ってもらえるような努力は無駄です。どのみちそれは大手企業に勝てない。
となると等身大の中身を見てもらうしかないと思います。
実際のところ、仕事内容を飾らず紹介しているようなWEBサイト、ブログやX(Twitter)を見て、応募者から求人はやっていないか?という問い合わせがあることがあります。
なんでそうなるかというと、そこで働く自分が想像しやすいからです。
今回はインタビュー形式の第三者目線で会社の中身を写してみた、という想定で作成してみました。
あまりゴテゴテと細かく説明しても嫌になるだけ。就職後の自分を想像しやすい材料を提供するにはこれくらいで良さそう。これでミスマッチはある程度防げると思いますよ。
このページの想定運用方法
既存の企業WEBページに追加もいいですし、新ドメインで求人応募用に制作するのもいいでしょう。
ページ数でコンテンツを盛り込めば地域名×職種×業種なんかでSEO効果も狙えます。
またX(Twitter)等のSNSでの誘導はもちろん、一般求人サイトからの誘導も可能ならかなり有効だと思います。